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   9 予告された選択



 彼女のぬくもりにふれていると、心地よい安穏さとたまらない不安が押し寄せてくる。自分でもその所以が分からない。ただ先日目の前に現れた白と黒の存在が、心の片隅に引っ掛かっているのは確かだった。
 ──君の大切なものは見つかった。
 見つかった?
 ……なぜ彼らは僕の大切なものを知っているのだろう。僕自身、思い出せないでいるのに。
 美帆さんはあれ以来、僕を片時も離さないようになった。学校に行っている間を除いて、いつだって僕をそばにおきたがった。塾も行かなくなった。学校から真っ直ぐに家に帰り、一歩もうちから出ない。いつもの彼女の気まぐれかと思ったが、実際に具合も悪そうだったから、僕は大人しくつき従った。
 少女は学校から帰ってくれば大概、自室かリビングのソファで塞ぎこんでいる。かと思えば急に顔をあげて、僕を呼んだ。
「ハル! ハル!!」
 隣に座れば腕を伸ばしてきて首にしがみついてくる。震える肩に両手をおいて、僕は無言で彼女が望むままにしていれば、やがてまるで突き放すような勢いで僕を解放した。
「……水、買ってきて」
「美帆さん。……一緒におにぎりかなにか買ってきましょうか。この間から、あまり食べられていないでしょう」
「ハルは自分の食べたいものを買ってくればいいわ。私は水だけでいいから」
「美帆さん」
「いいから早く買ってきて!」
 最近はいつもそんな感じだった。
 ときどき憑かれたように携帯電話を操作していたかと思えば、苛立った様子で携帯を放り出して、呼び出し音がなっても無視をする。
 彼女はなにかに怯えている。……不安がっている。僕は彼女の不安を解消してあげたいと思ってもなにもできなかた。
 ──もう〈良いこと探し〉もしていない。
 どうしたらいいのだろう。
 すぐそばで彼女の不安定さを見ていると、心がたまらなく揺れ動いた。そばにいたい。優しくしたい。抱きしめたい。だけどなにかが間違っている気がする。
 もうすぐ彼女の親が帰ってくる。そうすれば彼女の不安も和らぐだろうか。だけどそのときは僕がここと出て行かなくちゃいけない。彼女と離れるということはまったく想像つかなかった。彼女は僕のそばにいるべきだ、と思う。なのに僕自身、そのことがどうしようもなく不安なのだ。
「ハル、さん?」
 近くのコンビニエンスストアで、ペットボトルの水と、気が向いて食べてくれないかと思っておにぎりやサンドイッチを買った帰りだった。彼女から預かっている鍵で玄関の扉を開けようとすれば、不意にそう呼びとめられた。
 振り返れば、制服姿。陽菜さんだ。



To be continued
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水沢圭子

Author:水沢圭子
目指せ小説書き。日々の生活に甘んじず頑張るために実験的にブログ小説を始めることにしたくせに、結局書けてません。とはいえ現在は投稿メインでがんばり中。

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