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 少女が逃げるように校舎から出て、外で待っていたシヴァージに飛びつくのが見えた。シヴァージの首に両手を回し、必死に抱きつく。
 同じように下校する他の生徒たちの眼なんてまったく気にしていないようだ。
「……逆効果かな」
 私の隣でアーチィが呟いた。屋上の柵の上に腰を下ろし、足をぶらぶらとさせながら。
 きっと彼の言う通りだった。私は地上の不愉快な〈彼ら〉から視線を外す。
「やり方がまずかった。……すまない」
「いや。あのくらいはやるでしょ。通常業務範囲内!」
 アーチィはあっさりとそう断言した。……そうだろうか。彼女に告げた言葉の端々に私情が交っていたのは事実だ。それにアーチィも気づいているだろうに、彼は気づかないふりをする。
 眼下ではシヴァージが困った様子で少女を慰めているようだった。彼は彼らしい穏やかさで彼女の気まぐれな激情やわがままを受け止め、優しく包み込む。
「……あの調子じゃ、自発的な契約解除は無理かなあ」
 寄り添って歩き出した二人を見下ろして、アーチィがしみじみと呟く。
「ああ、説得は失敗だな」
 私には分かった。
 シヴァージは彼女を愛し始めている。……自らの〈半身〉ではなく、人間の少女を。
 不意にとんっとアーチィが柵を蹴って、宙に飛んだ。上空から去っていく二人の後ろ姿を目で追いかけながら、彼は小さく吐息をつく。
「あとはもう一つしかないね」
「……ああ」
 残された最後の選択──それは強制的な契約解除のみだ。
 静かに世界を見下ろすアーチィの横顔を、私は見上げた。わずかにそよぐ風が彼の黒髪を乱す。彼がなにを考えているかはだいたい分かった。
 ……本当は避けたかった。避けるべき選択だった。
 それでもシヴァージが地上に堕ちるよりはましなのだと考えるしかない。
 私は空に浮いている私の〈半身〉に呼びかけた。
「アーチィ」
「うん」
「天上に確認を。──強制的な契約解除が世界の調和を乱さないか。大罪に値しないかどうか」
 ゆっくりとアーチィは私の方を振り向いた。目が合った。交わした視線と一緒に、切なく想いが交差する。やがて彼は物憂げにうつむいて、小さく頷いた。
「……うん」
「私はシヴァージを見張っている」
 分かった、と言ってアーチィは天上に戻るために、宙に身体を滑り込ませる。──と思いきや突然、我に返ったように振り返った。
「セシル、」


To be continued
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水沢圭子

Author:水沢圭子
目指せ小説書き。日々の生活に甘んじず頑張るために実験的にブログ小説を始めることにしたくせに、結局書けてません。とはいえ現在は投稿メインでがんばり中。

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