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「……なんで?」
「なんで?」
「どうしてなの? 天使様はあたしを幸せにしてくれるんじゃないの?」
「……天使様?」
 ぼんやりと問うてくる彼女の言い分が分からず訝しく顔をしかめれば、アーチィがそれは彼女がはまっている仮想の話なのだと囁いた。良いことを百個したら幸せになれるインターネットのサイトだという。なんともくだらない話だ。
 胸に不快感がこみあげた。無意識に顔が歪む。
「あなたはなにか勘違いしているんじゃないか。天使が幸せを叶える? 幸せを待つだけのものに幸せが舞い込むとでも?」
 途端、キッと少女がまなじりを吊りあげた。
「だって! あたし頑張ってるもん! あたしは良いことをしている。天使様に認められるように、良いことをしてる!!」
「自分のために?」
「────」
 瞬間、少女は言葉を失った。顔面を蒼白にして、愕然と私を見返す。
 結局はそうだ。彼女は〈自分が幸せになる〉ために、良いことをしているに過ぎない。シヴァージを救いあげたのも〈自分が幸せになる〉ためだ。
 侮蔑の情に、口角が歪むのが分かった。
「おのれの幸せしか願っていないのに、良いことをしていると?」
「……天ちゃん」
 アーチィが少し困ったように言葉を遮ったが、私の不快感は収まらなかった。
 ──そう、いつだって自分のことしか考えていない。残される者の気持ちなど考えていない。その傲慢がいっそ憎いほどだった。
「自分の気持ちが優先で、それによって他人が不幸になってもかまわないと?」
「…………ちがう、」
「誰かを傷つけて、それで良いことをしていると言い張るの?」
「違う!!」
 彼女が叫んだ。
 身体の横で両手を堅く握りしめ、必死で少女は己への疑いを跳ねのけようと抗う。
「違う違う違う違う違う!! あたしは傷つけてなんかない。無理なんかさせてない。ハルはハルの意思であたしのそばにいるの! ハルの意思なんだから!!」
「────」
 蒼穹に、彼女の叫びが吸い込まれていく。
 少女の瞳から涙が零れおちた。
 けれど哀れとは思わなかった。……傲慢で頑なで歪んでいる。たかが涙に同情する余地などなかった。
 さらに追い詰めようと口を開こうとした瞬間、ぐいとアーチィに肩をつかまれて、私ははっと我に返った。隣を見やれば、私の悪魔はひどく真剣な顔で、少女を見つめていた。
「……ねえ、もし君が〈彼〉のことを想うなら、」
「あーちゃん……?」
 私の〈半身〉が、彼女を見つめた視線を外さずに、すっと目を細める。声は穏やかで、むしろ慰めるような趣さえあった。
「少しでも〈彼〉のことを想うなら、〈彼〉を解放してくれないか?」
「…………」
 少女の目が私ではなく、深い黒の存在へ向けられる。
 アーチィはもう一度言った。どこか切ないほど、懇願するような声音で。
「──頼むから、諦めてくれ」



To be continued
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水沢圭子

Author:水沢圭子
目指せ小説書き。日々の生活に甘んじず頑張るために実験的にブログ小説を始めることにしたくせに、結局書けてません。とはいえ現在は投稿メインでがんばり中。

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