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「──思い出せないなら、それでもいい。ただ、おまえの〈大切なもの〉は見つかった。もう探さなくていい。だから帰ってこい」
 その言葉にはっとハルが顔色を変える。
「っ!! それはどういう──!?」
「はい、今日はこれにて終了!! 時間切れ。天ちゃん、行くよ!」
 強引にハルの言葉を遮って、黒いスーツが白いスーツの腕を掴んで踵を返した。
「待ってください!」
「だめー!! また次の機会にね!」
「ねえ! ちょっと! あなたたち何者なの!!」
 思わず投げかけた私の問いに、意外にもふたりは足を止めて振り返った。並んで立つその姿を見たとき、不意にあたしはそれが〈一対〉なのだと閃いた。
 白いスーツの青年は婉然と微笑んだ。声はまるで透明できらきらと美しかった。
「私が天使で、」
「僕が悪魔だよ! じゃあねっ」
 黒いスーツのほうが締めくくるようにそう言い放って。
 彼らは去っていった。
 ――天使? あたしは困惑していた。どういう冗談なのだろう。それともなにかの比喩なんだろうか。変なの、と思いつつも、なぜだかあの白と黒の一対にはそれにふさわしいようにも思える。
 彼らの存在はすごく不自然で、自然だ。
 ……ハルは彼らの去っていく後ろ姿が見えなくなっても、しばらく視線で追いかけていた。その様子になぜだかあたしは不安になる。
 ──おまえの〈大切なもの〉は見つかった。
 見つかった?
 ぞくりと背筋が寒くなる。……ハルは〈大切なもの〉を探していた。記憶喪失になってもそれだけは覚えていた。分かっている。ハルにとってはそれが一番大切なのだ。
 あたしは隣に立つハルに目をやった。ハルはふたりの消えていった公園の入り口の方をまっすぐに見つめている。一心に見つめるその姿はどこか縋るようで。
「っ、」
 反射的にあたしは奪うようにハルの手を取っていた。大きくて暖かい手。ぎゅっと握りしめれば、ハルがあたしを見下ろした。
「美帆さん?」
 いつもの、困ったような優しい眼差し。なんだか急にそれが切なく感じる。なにか言わなきゃ、と思った。だけど胸の中がぐちゃぐちゃしていて、何を言えばいいか分からなくて、あたしはただつないだ手を引っ張ることぐらいしかできなかった。
「帰ろう」




To be continued
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水沢圭子

Author:水沢圭子
目指せ小説書き。日々の生活に甘んじず頑張るために実験的にブログ小説を始めることにしたくせに、結局書けてません。とはいえ現在は投稿メインでがんばり中。

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