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 シヴァージはたいがいいつも〈彼女〉のそばにいた。
 少女の家に住まい、少女が出かけると同時に出かけ、彼女が学校や塾に行っている間は周辺をうろうろして、帰るときにはまた一緒に帰る。
「……お姫様を守る騎士。というか、ストーカーでしょ、あれじゃまるで」
 僕は呆れて、その様子を見下ろした。
 夜九時。シヴァージは彼女の通う進学塾の入ったビルのそばにある公園のベンチに座っている。ひざを抱え、どこか寂しげにぼんやりと空を眺めて。
 公園を見下ろせるビルの上で僕とセシルは、僕らの仲間の動向を観察していた。
「お姫様も今のところ満足しているようだからいいんじゃないか?」
「そこがよく分からない。なんであのお姫様は、シヴァージをそばにおいてるの? どう考えてもシヴァージは身元不明の不審者だよ?」
「顔がいいからじゃないか?」
「……いまどきの女の子は怖いもの知らずだなあ」
 まあ、シヴァージは人畜無害そうに見えるけど。
 無害で容姿の優れた男を侍らせて、少女はなにを望む? いまひとつ僕は少女の行動の意図が測りかねていた。少女は彼を独占したがっているように見えるが、彼に恋情を抱いているようには見えない。……なら自己満足か。見目麗しい男を従えることが女性の魅力と思っているのか。そうでなければたとえば──あてつけとか?
 どうにしろ〈少女〉の意向は、僕らには関係ないけれど。
 今、シヴァージはひとりだ。
「……降りる?」
「だな」
 誘えば、セシルが頷いた。──決定だ。
 次の瞬間、僕らは地上に降り立っていた。公園の入り口。シヴァージの座っている広場のベンチがここからも見える。だけど彼は〈僕ら〉に気づいた様子はなかった。
「こんなに近くにいて気づかないなんてどうかしてるよ!」
「……魂が肉体を浸食し始めているのかもしれないな」
「それ、大問題じゃない?」
 セシルの素っ気ない言葉に僕は彼を振り返った。
 と、僕の天使は先に歩き始めている。慌てて追いかけた。
「彼の〈半身〉がまだ覚醒していないんだ。不安定な〈魂〉が保てず、〈肉体〉に引っ張られている可能性が高い」
「……早く契約を破棄しないと」
 僕は顔を歪めた。それは最悪の展開と言えた。たとえ覚醒後の天使とはいえ、もし〈肉体の契約〉を結び、誤ってその〈肉体〉と〈魂〉が融合すれば、彼はもう〈天使〉としては役立たずになってしまう。つまり〈天使〉を辞めるということだ。──レイの半身と同じように。
「セシル」
 思わず僕は、〈半身〉に向かって呼びかけていた。
 ゆっくりと僕らの〈友人〉のもとに歩み寄りながら、彼が少しだけ僕を振り返る。玲瓏な横顔はどこか苦しげだ。どれだけ感情を隠そうとしたって、僕には彼の〈痛み〉分かったし、彼が〈痛み〉を感じるなら、僕だって痛かった。
 問いたげな視線をよこしたセシルを、僕はまっすぐに見つめ返した。
「多少荒っぽくなっても、契約は破棄させるよ、僕は」
「……アーチィ」
「仕事は完遂する。──でしょ?」
 ああ、と呟くように彼が頷いた。……僕の言葉に少し安堵したように。
 その次の瞬間、僕らは〈友人〉の目の前にたどりついていた。
「────」
 僕らに気づいて、シヴァージが視線を上げる。驚いたような顔をした。だけどそれは〈友人〉だとは気づいていない反応だ。
「……あなたたちは、この間の事故の、」
 戸惑いがちに言葉を漏らす彼に向って、僕らは手を差し伸べた。
「さあ、迎えにきたよ。──兄弟」


To be continued
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水沢圭子

Author:水沢圭子
目指せ小説書き。日々の生活に甘んじず頑張るために実験的にブログ小説を始めることにしたくせに、結局書けてません。とはいえ現在は投稿メインでがんばり中。

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