上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
 
「どうする?」
 夜は更け、ビジネス街には人の気配がだいぶ薄くなっていた。車の数も減り、ビルの明かりも少なくなっている。静かだった。
 僕とセシルは背の高いビルの屋上で、世界を見下ろしていた。
 レイは去っていた。これはあくまで僕とセシルに与えられた仕事だからだ。彼は手伝いにきているだけ。また必要があれば彼に助力を求めることになるだろう。
 セシルは屋上の柵を背に、僕はその足元の屋上の縁に座っている。
「セシル?」
「……まずはシヴァージと、あの子を引き離さなきゃ、」
「…………うん」
 僕らの仕事は、世界の調和を乱さないように、シヴァージを天上に戻すことだ。〈それ以外のこと〉は僕らの仕事じゃない。
 僕は足元から僕の天使を見上げる。天使は遠い目をして、地上を眺めている。
「でもたぶん彼女が契約の鍵だよ。鍵がないと契約が破棄できない。シヴァージは記憶を失ってて頼りにならないし」
「契約継続のままで記憶の回復は望めるか?」
「どうだろう。記憶喪失状態で契約をしたなら、それが標準設定になってるかも」
「厄介だな……」
 問題は山積みだ。シヴァージの記憶喪失、肉体の契約、契約の鍵となる〈少女〉。……そして、シヴァージの〈希望〉。
 僕もセシルに合わせて眼下に広がる夜の街を見下ろした。
 夜の闇にきらめく電光。……ざわざわと人の生きる気配。いろんな感情と欲望が蠢いているが分かる。人の気配を感じるとなんだか切なかった。──かつて人だったときのことを思い出されるようで。
 僕は目を細めた。
「……気づいているのかな、シヴァージは?」
「自覚はないだろう」
「うん」
 シヴァージはなにも分かっていない。ただ彼は自らの半身をひたすらに追い求めただけだ。その気持ちがよく分かるだけに、僕はそれを責める気にはならなかった。
 ただ記憶がないのは大問題だ。
「……直接接触してみる?」
 僕の提案にセシルがようやく僕に視線をくれた。
「〈彼女〉はどうする?」
「ひとりでいるところを狙って揺さぶりをかけよう。それで記憶が戻れば上々だ」
「記憶が戻らなければ?」
「〈少女〉の方を説得して契約解除?」
「……そうだな」
 そう言えば、セシルがそれでようやく少し笑んだ。セシルの笑みで僕も嬉しくなる。僕は立ちあがった。それから手を差し伸べる。
 セシルの手をとる。
 その白くたおやかで美しい手を。




To be continued
----------
にほんブログ村 小説ブログへ

ブログランキング・にほんブログ村へ


FC2 Blog Ranking



 
Comment






(編集・削除用)

 

管理者にだけ表示を許可
Trackback

http://smallgrass.blog3.fc2.com/tb.php/78-d90f1748
プロフィール

水沢圭子

Author:水沢圭子
目指せ小説書き。日々の生活に甘んじず頑張るために実験的にブログ小説を始めることにしたくせに、結局書けてません。とはいえ現在は投稿メインでがんばり中。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
リンク
QRコード
QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。