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 ……僕たちは、知っていた。
 彼の望みを──シヴァージの悲痛な嘆きを。
 嘆き? いや、それ以上だ。
 僕たちは己の半身がいなければ、〈無価値〉と言えるほどに中途半端で無力な存在でしかたりえない。そのため、本来一対の誕生──〈覚醒〉はほぼ時差なく生じる。一方が生まれてから、その半身が生まれるまでに要する時間はせいぜい一、二年といったところだろう。けれどシヴァージの半身である、彼の〈悪魔〉は、彼が覚醒して以降、長く生まれていなかった。
 ──十二年。
 それは永遠ともいえる時間を過ごす〈僕ら〉にとっては、一見他愛もない時間のように見えるが、半身のいない〈存在〉にとっては拷問のように長い苦痛でしかなかった。
 僕たちには肉体がない。身体が望む〈欲望〉がない。欲することもなければ、無力がゆえにできることもなく過ごす時間が、どれほど悲惨で苦痛に満ちたものか。
 延々と続く無味乾燥の日々。
 空っぽの世界。
 時間を呪い、自らが生じたことさえ恨み、狂うことも許されない苦痛。寂しいという言葉では言い表すことのできないような、圧倒的な孤独。
 ……僕は四十九年、待った。正確には四十九年と九五日。
 レイは、それよりもさらに八年長い。
 ──信じるしかない、とレイは言った。
 かつて天上で僕とレイだけが延々と半身の誕生を待ち続けていたころ。僕が待ちきれなくて、今回のシヴァージのように半身を探すために、無断で地上に降りようとしたときだ。
 追いかけてきたレイの冷静さに苛立って、僕は彼に噛みついた。
「なんでレイはそんなに冷静でいられるんだよ!?」
「……仕方がないだろ。待つしかないんだ」
「でも! 相手の方こそ待っているかもしれないじゃないか! 僕が迎えに来るのを、向こうこそ待っているかもしれないじゃないか!」
「〈形質〉をもった人間は全部把握されているし、〈覚醒〉を拒むのはごく稀だ」
「知ってるけど!!」
 僕の反駁を飲み込んで、レイはただ言葉を重ねた。
 信じて待つしかない、と。
 ……でも逢いたいんだ。逢いたい。逢いたい。逢いたい。道理や規則や意味なんてどうでもいい。ただ逢いたい。心がひたむきにまっすぐにそれだけを追い求める。
 ──僕の天使。
 僕の大切な半身。かけがえのないもの。
 セシル。
 そう、僕はずっと君が現れるのを待っていた。ずっと待っていた。
 セシル。
 僕がどれだけ君を求めていたか、君は知っているだろうか。
 ……いや、君は知っている。〈僕たち〉がどれだけ〈君たち〉を待ち続けていたか。どれだけ強く求めていたか。どれほど餓えていたか。知っているからこそ、君は許せない。
 ──レイの半身の裏切りを。
 君の〈双子〉の天使の離反を、どうしても。



To be continued
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水沢圭子

Author:水沢圭子
目指せ小説書き。日々の生活に甘んじず頑張るために実験的にブログ小説を始めることにしたくせに、結局書けてません。とはいえ現在は投稿メインでがんばり中。

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