上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
 



 〈好き〉という感情のことを考える。
 相手のことを好ましく想うこと。気に入ること。心が向かうこと。
 僕は美帆さんのことが〈好き〉だ。
 その気持ちに嘘や偽りはないけれど、「本当に?」と問われれば、なんとなく気後れをしてしまう。その問いは真偽を尋ねているのではなく、度合いを測っている。〈好き〉という感情の真摯さを確かめているのだ。
 僕は美帆さんのことが〈好き〉だ。
 一方で、僕は〈大切なもの〉を探している。かけがえのない、それがないと生きていけないほどに大切なものを、僕は心の底から探し求めている。
 ……分かっている。
 比べることじゃない。二つの心は似て非なるもので、重なり合わないのだから。
 だけど。
 ──本当に?
 問われれば、僕は戸惑う。それはまるで、どちらの心に対しても、その真剣さを咎められているような気がして。
 ……不思議な胸騒ぎがしていた。
 バランスが崩れているような気がする。不穏な感覚が肌をざわりと撫で上げ、緊張に心臓が早まるようだ。この世界で〈自分〉に気がついてから、こんな不思議な感覚は初めてのことだった。
 なにが、起きている? 自分に――もしくは自分の周囲に。
 僕は隣を歩く彼女を見下ろす。小さな身体だ。彼女の身体にはいつだって寂しさと強さとが複雑にまじっている。……もしなにがあったとしても、彼女は守らなくてはいけない、と僕は強く思う。
「──ハル? どうかした?」
 僕の視線に気づいて彼女が顔を上げる。
 夜だった。彼女が週に三回通っている塾の帰り道。駅に向かう通りを連れだって歩いていた。僕は彼女に笑んでみせる。僕の不安は、彼女とは関係ないものだから。
「なんでもありません」
「そう? なんか昨日から変だよ?」
 彼女の不思議そうな問いかけに、心配ない、と返そうとしたときだった。
「っ、」
 うわんっと突然耳鳴りがして、僕は思わず足を止めた。
 耳鳴り? ──いや、もっと直接〈感覚〉に訴えてくるような。
「ハル?」
 彼女の声すら、その〈響き〉にかき消されそうだった。〈感覚〉を引っ張られる。強引な〈それ〉に、抗いきれずに背中を振り返った瞬間──。
 甲高い金属音が耳をつんざいた。


To be continued
----------
にほんブログ村 小説ブログへ

ブログランキング・にほんブログ村へ


FC2 Blog Ranking
 
Comment






(編集・削除用)

 

管理者にだけ表示を許可
Trackback

http://smallgrass.blog3.fc2.com/tb.php/74-aba37451
プロフィール

水沢圭子

Author:水沢圭子
目指せ小説書き。日々の生活に甘んじず頑張るために実験的にブログ小説を始めることにしたくせに、結局書けてません。とはいえ現在は投稿メインでがんばり中。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
リンク
QRコード
QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。