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「……美帆? ちょっと遅れるみたいよ」
 校門で彼女を待っていたら、彼女の友だちが先に現れた。肩につくぎりぎりの長さのまっすぐな黒髪がきれいな女の子だ。──彼女の幼なじみ、陽菜さん。今日はもう一人の、健康的で華やかな友だちはいない。
「なにかあったんですか?」
「男、」
「え?」
「どうせまた手酷くふってるのよ」
 陽菜さんはあっさりとそんなふうに言った。〈手酷くふっている〉ということがどういうことなのか僕はよく分からなかった。困って首を傾げれば、ふと陽菜さんがまっすぐに僕を見つめてきた。身長差があるから、まるで見上げられるようになる。
 強い目だ。揺るがない。
「ねえ、あなた、美帆のこと好きなの?」
「好きですよ」
「本当に?」
 念を押されて僕は戸惑う。彼女のことは好きだ。優しいし、包容力があって、感情が豊かで素敵な女の子だと思う。だけど目の前の少女はきっともっと違う〈好き〉を聞いていた。なんていうか、もっと身に迫る〈好き〉について。
 だけど僕はそんな〈好き〉という感情はよく分からなかった。
「もし本当に好きじゃないなら、美帆に優しくしないで」
 陽菜さんは僕の惑う様子をうけて、厳しく眉をひそめた。
「中途半端が一番いやなの。最悪よ。美帆はあたしのことをお堅いとか馬鹿にするけど、あの子の方がよっぽどよ。傷つくのは自分なんだから」
「……僕は、彼女を傷つけるつもりはありません」
「つもりがなくても!!」
 思いがけず強い声に、どきりとした。
 揺るぎない、強い感情。ああ、と眩しいような想いで僕は少女を見返した。
「……美帆さんを、心配しているんですね」
「そういうことじゃなくて!」
 言えば、なぜか目の前の少女はカッと顔を紅潮させて反論した。そういうところも微笑ましく思える。そうか、と僕は思った。……このくらいの年代の女の子というのはそういうものなのかもしれない。〈自分の心〉を見透かされたくなくて、露悪的に振る舞う。
 可愛いな、と思った。美帆さんのことも陽菜さんのことも。
 僕が静かに笑っているのを見つけて、陽菜さんがむっと唇を尖らせる。拗ねたような顔で僕を見上げた。
「なに笑ってるの!」
 そのときだった。あーっと甲高い声が遠くから聞こえた。見やれば、玄関のところから美帆さんが勢いをつけて走ってくる。
「陽菜、なにやってんの!」
「おかえりなさい、美帆さん」
「ハル!」
 なぜか彼女はいきなり不機嫌に、そう噛みついてくる。目の前に来たかと思えば、僕の腕を掴んでひきよせた。と、陽菜さんが最初に出会ったときと同じように渋い顔をする。
「なにってちょっと話してただけじゃない」
「ハルはだめ! あたしのなんだから!」
「誰も取ろうとなんかしてないわよ」
 陽菜さんは冷たいくらいあっさりと言い放った。僕は不思議だった。美帆さんのことを心配しているような様子なのに、いざ彼女を前にすると冷たく装う。そして美帆さんもまた、まるで子どものケンカのように言い返した。
「そんなの分からないんだから!」
 美帆さんをなだめるように、僕は口を開いた。
「……陽菜さんは、美帆さんのことを心配してくれてるんですよ」
「別に心配してない!」
 と、今度は陽菜さんが声をあげた。それから「今日、塾でしょ。あたし帰るから!」と早口で言って彼女は背中を向けて歩き出してしまう。あっという間の出来事に僕はぽかんとした。美帆さんは美帆さんで、なんだか拗ねたように唇を尖らせている。
「陽菜はいっつも怒ってばっかり」
「……心配しているんですよ」
「あたしのことが気に入らないのよ、きっと。嫌いなの」
 そう傷ついた顔で、友だちを見送って。……きっと美帆さんも陽菜さんのことが〈好き〉なんだろう。なのに、なぜかうまくいかない。
 ふとふっきるように、美帆さんはふっと僕の方に向けた。
「行こっか」


To be continued
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水沢圭子

Author:水沢圭子
目指せ小説書き。日々の生活に甘んじず頑張るために実験的にブログ小説を始めることにしたくせに、結局書けてません。とはいえ現在は投稿メインでがんばり中。

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