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 私の一喝に、我に返ったように二人が顔をあげた。
 ……衝撃は、すでにビジネス街から去っていた。一瞬にして、また静かな夜に戻る。受け止めた衝撃で自らの翼が震えるのを感じながら、私はあくまで冷静にレイを見やった。
「──レイ、挑発に乗ったふりはよせ」
 ふん、とレイが鼻を鳴らす。
 アーチィは直情系だが、レイは冷静な悪魔だ。アーチィの戯言に我を忘れるようなタイプじゃない。つまり、彼はわざとアーチィの挑発に乗ったのだ。
「っ、」
「アーチィ」
 私の言葉でそれに気づいたアーチィがまた感情を揺らしかけるのを感じて、私は半身の名前を呼んでそれを抑える。拗ねたように唇を尖らせて、アーチィは感情を収めた。
「私たちが調和を乱してどうする? そういうやり方は最終手段だ」
「でも、セシル、」
「明日、そこの交差点で二人死ぬ。……それで様子を見よう」
 死は予告される。
 私たちは、あらかじめ決められた死の瞬間──つまり肉体機能が停止し、定着していた魂が解き放たれる瞬間に立ち会い、その魂の行く先を正しく導くことを役目のひとつとしている。そこで私たちの力は発揮されるのだ。
 本来であれば、私とアーチィの一対で正しく行われるその力の発動を、第三者──レイの存在をわざと介在することによって歪ませる。たとえ契約をして肉体のプロテクタをまとっても、同胞であれば本来の能力の発動とその歪みを感じないはずがなかった。そうすることによって、〈彼〉をおびき出すのだ。
「……分かった」
「イエス、マム」
 アーチィが不承不承、レイがつまらなさそうにそう返してくる。
 と話が決まった途端、即座にレイが踵を返した。慌てて私はその背中に呼びかける。
「レイ、どこへ行く?」
「明日の刻限までは自由だろう?」
 嫌な予感がして、私は顔を歪める。思い出したくもない〈予感〉だ。
「……接触は禁止だぞ」
「なにとの?」
 まったく顔色を変えずに、レイがそう振り返って〈私〉を見た。まっすぐで揺らぎのない──悲しい眼差し。
 先に逸らしたのは私だ。
「行け! 死の刻限に戻ってくればそれでいい」
「……そ。じゃあね、」
 そして一瞬のうちに、レイは姿を消した。くそっと呻いて、アーチィは姿の消したその空間に〈意思を投げつける〉。風が通り抜けた。もちろん誰もいないのだから空振りだけど。
「大っ嫌いだ!!」
「……それには賛成だな」
 つくづく私たちと彼はそりが合わないのだ。彼の考えもやり方もなにもかもが気に入らない。けれど私は消えてしまった悪魔に少しだけ想いを馳せた。
 半身を失うことは、私たちにとって自らの身を引き裂かれるよりもつらいことだ。だが彼は自らそれを受け入れた──まさに愛する半身のために。
「セシル、ごめん」
「なぜ謝る?」
 不意に悄然として頭をさげた悪魔に、私は我に返って目を送る。
「また、考えなしだったから」
「気にしてない。……いつもおまえは、私のために怒ってくれている」
「……セシリィは、僕のだから」
「当たり前だろう?」
 甘えてすり寄ってきた悪魔の身体を私は抱き寄せる。これは、私の悪魔だ。失うことなど考えられない大切な存在。
 それを手放すなんて馬鹿な選択だ、と私は思う。たとえかけがえのない半身のためとはいえ。……自分を裏切った半身だというのにも関わらず。
 ──レイ。
 おまえは愚かな悪魔だ。




To be continued
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水沢圭子

Author:水沢圭子
目指せ小説書き。日々の生活に甘んじず頑張るために実験的にブログ小説を始めることにしたくせに、結局書けてません。とはいえ現在は投稿メインでがんばり中。

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