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 しかし、私たちはすぐにその選択を後悔することになった。
 夜。人気の絶えた、ビジネス街の裏通りで、私たちは私たちの協力要請に応えて天が遣わした同胞に対面していた。
 血のように赤黒い髪。夜なのにサングラス。黒の革パンに黒のシャツ、ジャケット。耳にはいくつものピアス。……まったくこういう格好を好んで選びたがる〈彼〉の神経が私には理解できない。
「──地上で茶会か? おまえらにしては珍しく趣味が良いじゃないか」
 唇を歪め笑いながら揶揄する声が癇に障る。
 言葉を返す気はなかった。黙り込んだ私の代わりに、不愉快を露わにしてアーチィが噛みつく。
「俺たちは、あんたを呼んだ覚えはないよ。なにしに来た!」
「なんだ。おまえたちが助けを求めているっていうから来てやったのに、ずいぶんつれない反応だな」
「誰がおまえなんかに!」
 そんなアーチィの敵愾心むきだしの言葉も私の無視も、〈彼〉は軽く受け流した。
「しょうがないだろう? 今、空いているのは俺ぐらいしかいないんだ」
 そう言って、わざとらしく肩をすくめる。
 〈彼〉は悪魔だ。──私たちの同胞の。
 ただし私もアーチィも、個人的には彼のことを仲間だとは思っていなかったが。
 ちっとアーチィが忌々しく舌打ちをする。
「……半端もののくせに」
「だから、都合がいいんだろう?」
「──レイ」
 悪びれた様子もなく問い返した〈彼〉に、私は初めて声をかけた。
 そのとき初めて相手も私のことをまっすぐに見た。サングラスの奥で、目を眇めたのが分かった。
「……てっきりもう仕事は放棄しているのかと思ったが?」
「俺ひとりでできる仕事って数少なくてね」
 声をかけてもらえて有難いよ。なんて心にもないことを言って、彼は薄く笑った。
 レイ。
 彼は半身を──自らの天使を失った、半端な悪魔だった。
 私たち天使と悪魔は通常、二つで初めて完成する一つの存在だ。だから半身を失った彼の存在はあまりにも不安定すぎた。二人で向き合っている私たちでさえ、その存在の揺らぎに巻き込まれそうになるくらいに。
 だからある意味彼の言うことは正しかった。だからこそ、都合がいい。
「さあ、どうする?」
 黙りこんだ私たちに、挑戦的にレイはそう訊いてきた。まるで、お手並み拝見、と言わんばかりの態度に、むっとしたのはやはり私ではなくアーチィだった。
「シヴァージに気づかれるなら、俺はどんなやり方だってかまわないんだ。たとえば、ここであんたを叩きのめすってやり方でもね!」
「っ」
 瞬間、ザアッ!! とアーチィを中心に衝撃が弾けた。
 アーチィが不可視の翼を広げたのだ。突然のその力の発動に、大気が鳴動し、音を立てて送電線が揺れる。外灯がチカチカと明滅を繰り返した。
「……なるほど」
 強烈な風を受けて一歩後ずさったレイが、乱れた髪を左手でかきあげながら、不穏な目つきを返してくる。
「上等だな、アーチィ。おまえが俺に勝てるとでも?」
「先輩面して! 昔からその上からの物言いが気に食わないんだよ!」
「いつまでも反抗期やってろ、餓鬼が!」
 レイが叫ぶと同時に、ドン! と二度目の衝撃が走った。翼を広げたレイから生み出された圧倒的な力が周囲を薙いでいく。ビリビリと振動で、地面が、木々が、ビルが揺れた。
 それは明らかに人知を超えた現象。
 私は静かに腕を広げた。私が感知しうる、彼らの衝撃の範囲を〈包み込む〉。そして渾身の力で、それを〈抑え込んだ〉。今ならまだ〈地震〉の揺れとして誤魔化すことができる。
「いいかげんにしろ、アーチィ! レイ!」


To be continued
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水沢圭子

Author:水沢圭子
目指せ小説書き。日々の生活に甘んじず頑張るために実験的にブログ小説を始めることにしたくせに、結局書けてません。とはいえ現在は投稿メインでがんばり中。

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