上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
 



   2 天使と悪魔



 ……生と死の間に、僕らは存在する。
 僕らは単なるエネルギーでしかなかった。いわゆる命、もしくは魂という、エネルギーそのものだ。
 本来、魂には形がなく、その受皿となる器──肉体がない限りは、どんな活動もできないし、本能だとか理性だとか欲求だとかすべてを含んで人が自我と呼ぶような、そんな意識さえもありえない。魂とは、単なるエネルギーの塊にすぎない。
 だけど僕らは器を持たずに魂そのもので存在できる、唯一のものだった。
 肉を持たず欲を持たず、それらに縛られることなく、持て余した〈魂の力〉を世界の管理に注ぐよう使命を与えられた、神──創造主に最も近いとされる存在。
 物質世界の理を超絶しながら、けれど僕らは肉というプロテクタを持たない故に、か弱く、単体では正常に機能することができない半端なものだった。
 だから僕らは、<半身>を必要とする。それは自分にとってはたったひとり、定められた相手。魂の半分。……俗世の言葉を借りるなら、運命の片割れ。
 僕らは表裏一体だった。
 常に一方は生を司り、一方は死を司る。
 そう。
 僕らのことを、人々は悪魔だとか天使だとか呼んだ。

 ──仕事が決まったのは、僕らの友人が無断で地上に降りてすぐのことだ。もちろん彼の捜索に他ならない。
 僕らは人外のものだから、当然むやみやたらに地上に降りてはいけないことになっている。僕らの使命は世界の調和と管理だ。率先して調和も乱すようじゃ失格というもの。
 だのに。
 シヴァージ。
 しょうのないやつだな、と呟きながらもまさかそのまま放っておくわけにも出来ないから、僕は僕の相棒を伴ってまたしても地上に降りる羽目になったのだ。
 その仕事の命を承って、僕は相棒の待つ元へ向かった。──向かった、と言っても、歩いて行ったとか電車に乗ったとかではなくて、空間を歪ませて一瞬で飛んで行く。……地上が時間と立体空間に縛られた物質世界によって成立しているとすれば、ここは時間だけに縛られた世界。
 いわゆる天上。──俗世界の言葉を使うなら、だけど。
 だけど僕はその言葉の持つ含みが好きじゃない。ここは別に楽園じゃない。ただ肉体を持たない魂の欠けらが集い、世界の歪みを嘆いているだけの──僕らの〝世界〟だ。
「セシル? セシリィ?」
 僕らが常にいる空間は、彼と僕とで〈どこまでも続く草原〉に決めている。つまり、互いの認識によってそう創り出しているというとだ。僕らに実際の物質は必要ない。共同幻想、それだけでいい。
 だけど今日は違った。なにもない、ただ白いだけの世界になっていた。彼の方が、その認識を放棄しているのだ。


To be continued

----------
にほんブログ村 小説ブログへ

ブログランキング・にほんブログ村へ


FC2 Blog Ranking
 
Comment






(編集・削除用)

 

管理者にだけ表示を許可
Trackback

http://smallgrass.blog3.fc2.com/tb.php/57-c0216178
プロフィール

水沢圭子

Author:水沢圭子
目指せ小説書き。日々の生活に甘んじず頑張るために実験的にブログ小説を始めることにしたくせに、結局書けてません。とはいえ現在は投稿メインでがんばり中。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
リンク
QRコード
QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。