上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
 
「分からなくてどうやって探すの?」
「分かります」
 僕は不思議そうにしている彼女に笑いかけた。その自信だけはあった。
「分かるんです、出会えば、絶対」
「……なにそれ」
「絶対惹かれるんです、分かります」
 ふうん、と呟いて、また彼女はコーヒーを一口に口に含んだ。
「まあ、いいや。行き倒れてて行くとこないならしばらくこの家にいていいよ。……これってあなたの役にたつ?」
「役に、ですか?」
「良いこと?」
「……そうですね、僕は助かります」
 少し考えて答えると、やっぱり彼女は本当に嬉しそうに表情を和らげた。
「部屋は二階に客間があるからそれを使えばいいし、キッチンもバスルームも好きに使っていいよ」
「──どうして」
 素直な疑問を僕は口にした。彼女は子供のように無邪気で、それでいてどこか大人びた、不思議な笑顔を僕に見せた。
「あたし良いこと探してるの」
「…………」
「良いこと百個集めて、天使様にお願いを叶えてもらうの。──だから」
 彼女の言葉は僕にはよく分からなかった。……でも多分、だから僕を拾ったのは偶然だったのだろう。ただ偶々僕がそこにいて行き倒れて誰かの助けを必要としているように見えて、助けたら良いことになるから、拾ったのだ。どこか打算的にも見える「良いこと」だけど。
 確かに、優しさが、見えた。
 僕に声をかけたとき、彼女は本気で僕を心配してくれていた。だから僕は躊躇いなく頭を下げた。
「お世話になります」
 彼女に笑いかけると、彼女は良かった、と呟いてほっと息を吐いた。……そのため息はまるで深刻そうに聞こえて。
「……美帆さん?」
「そうだ」
 と、けれど不意に顔をあげて、楽しそうに彼女は僕の方を見た。
「じゃあ名前決めなきゃ」
「──え?」
「不便でしょ、名前ないと。あたし、名前付けるの好きなんだ。猫、いたでしょ。黒猫がエディで、白いのがブラン、ぶちはブチ猫ホームズっていうの」
「可愛い名前ですね」
「名前覚えてないんでしょ? じゃあやっぱり決めなきゃ」
 どうしようかな、と言いながら彼女は僕をまじまじと見た。居心地が悪い、とは思わなかったけれど、名付けられるというのが不思議な感覚で僕は落ち着かなく、そんな彼女の視線を浴びた。
「綺麗な黒色の髪をしてるね、肌も結構浅黒いし、彫りも深いし、ねえ実はハーフ? なんか南国っぽいよね、アラブとか」
「はあ」
「──ハル」
 急に彼女はそう言って、口を噤んだ。僕はなぜかその瞬間にとてもどきりとして、はっと彼女を見つめ返している。彼女は真っすぐに僕を見た。
「ハル」
「────」
「ハル、に決めた。あなたのことこれからハルって呼ぶね」
 彼女は微笑む。
 僕は見つめる。
 そしてその瞬間に、契約は成されたのだ。



To be continued
----------
にほんブログ村 小説ブログへ

ブログランキング・にほんブログ村へ


FC2 Blog Ranking
 
Comment






(編集・削除用)

 

管理者にだけ表示を許可
Trackback

http://smallgrass.blog3.fc2.com/tb.php/56-447cdf40
プロフィール

水沢圭子

Author:水沢圭子
目指せ小説書き。日々の生活に甘んじず頑張るために実験的にブログ小説を始めることにしたくせに、結局書けてません。とはいえ現在は投稿メインでがんばり中。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
リンク
QRコード
QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。