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 パアン、と遠くでクラクションが鳴った。
「……落ち着いてるね」
「そうですね」
「つまり、行き倒れてるんじゃないの?」
 彼女の言うことは正しいのかもしれないと僕は思った。自分には行くところがない。どこに行けばいいのかも分からない。これを行き倒れ、というのだろう。
「そうかもしれません」
「……これからどうするの?」
「さあ、分かりません」
 また沈黙が落ちた。露地に座り込む僕と角から覗き込む彼女との微妙な距離を、視線だけが繋いでいる。
 ……僕はどうすればいいのだろう。大切なものに出逢うためには、どうするべきなのだろう。──逢いたい。逢いたい。逢いたい。逢いたい。
 胸を締め付ける想いに、僕はそっと目を伏せた。
 逢いたい、ただそれだけなのに。
 静かに、彼女の声は尋ねた。
「もしかして困ってる?」
「……そうかもしれません」
「行くとこ、ないの?」
「ありません」
 じゃあ、と彼女は言った。
 そのとき初めて、彼女は角から露地へ一歩足を踏み入れた。僕はきょとんと目を見開いて彼女を見た。
 制服を着ていた。胸元で揺れるリボンが赤い。髪は長くて、光に透ける綺麗な黒色をしていた。その髪が肩の上で揺れて、露になった耳に小さなピアスが街灯の光にきらりと光る。
 僕は、なぜか、見惚れていた。
 きれいだった。
 なんでだろう。聖母のようだ、と僕は思ったのだ。
 彼女は僕のすぐ傍まで来て、足元にしゃがみこむと小首を傾げて言った。
「あなたを助けてあげることって良いことになる?」
「……人を助けることは基本的に良いことなのではないのですか?」
「そうだよね、」
 なぜかひどく嬉しそうに彼女は笑った。
「じゃあ、ごはんおごってあげる」
 ……断る理由はなかった。

To be continued

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水沢圭子

Author:水沢圭子
目指せ小説書き。日々の生活に甘んじず頑張るために実験的にブログ小説を始めることにしたくせに、結局書けてません。とはいえ現在は投稿メインでがんばり中。

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