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「あ、うん」
「双子の……全てのものを分かち合った、弟です。……父母はすでにいないので二人きりの家族ですが、今は互いに仕事があるのであまり逢っていません」
「……そう」
 だからなのか、と一瞬水江は思った。
(だから、孤児になった俺の?)
 告げたシアがそっと顔を上げて、水江を見やった。緩やかに微笑む。
「父母がないといっても、私達は最初から捨てられて顔も知らないので余り気にはなりません。……ですから、水江さんは気になさらなくていいんですよ」
「え? ああ、うん……えっと、じゃあ友達とかは? ──ずっとヨーロッパにいたんだろ、だったら」
「友達はいません」
 余りにもはっきりした返事に水江はどきりとして、すぐ隣に座っているシアを見つめた。
(じゃあ、あの人は?)
 そう思うのは、疑いなのか、安堵なのか分からない。あの男がシアの友達でなければいい、そう思ったのは確かだった。
「いないって……、シアに友達がいないわけないじゃない。優しいし、なんていうか人望があって人気者っぽいけど」
「いえ、私は優しくなんてないです」
「…………」
「友達はいません。……私たちは──私は、そうですね、周りから見れば余り普通とは言えないんじゃないかと思います。私たちは昔から、他人とうまくやっていけない質なんですよ」
 水江を見つめて微笑みながら、淡々とシアはそう告げた。その微笑みがどこか。
(なんだろう……)
 淡い水色の眼差しがまるで涙のような。
「──シア」
「生まれたときから──そう、どこにいても、いつまでたっても。駄目なんですよ、私たちは。……昔も今も、やっぱり周りは異端者を見つけるのはうまいんですね」
「異端だなんて」
 水江はソファから身体を起こし、思わずそう言い返していた。異端なのは自分だ、自分みたいのを言うのだ。シアのように優しい人は……。真っすぐに見つめてくるシアの眼差しを見つめ返し、水江はたまらず口を開いた。
「シアは異端じゃない、異端じゃないよ。全然普通だよ! 俺なんかより断然普通だよ、シアは普通だ」
「……水江さん」
「シアは普通だよ。──少なくとも俺はシアを異端だとか差別したりしない」
 水江の言葉を聞き、シアはそっと身体を起こしながら水江を見つめ、ふわりと柔らかく相好を崩した。腰を上げて、同じソファの隣に座る水江に覆い被さるように身体の向きを変える。
「……シア」
「もし、じゃあもし私が本当に異端で、人間ですらなく……そう、たとえば天使なのだとしたらどうします?」
 天使云々はこの間の水江の言葉を受けてのものだろう、水江はぼんやりと穏やかに微笑み見下ろしてくるシアを見上げた。
 美麗な顔だ、とふと水江は思う。天使といわれても信じてしまいそうな、果敢なく繊細な柔らかい、綺麗な顔だ。
「天使って、それはただ似てるってだけの、」
「もしも、ですよ」
「シア」
「もし、私が天使だとしたら」
 深みのある高くもなく低くもない声が心地よく耳に囁く。目の前の端正な顔に目を奪われながら、まるで誘われるように水江は口を開いていた。
「……俺、多分信じるよ。あんたが天使だって言っても。でもだからってどうにもしないよ、シアはシアだ」
「…………」
「俺にとってシアは、シアだ。それ以外のなんでもないよ」
 シアは静かに微笑み、頷いた。
 ソファに座ったままの水江をまるで腕の中に閉じこめるように、シアはソファに腕をついた。きし、とソファが僅かな重みを感じて小さな声を上げる。
 Tシャツを脱いだままの水江の素肌に、シアの白いシャツの生地が触れた。
「シ、ア……?」
「……じゃあもし、あなたも天使なのだといったら?」
「──え?」
 鼻先が触れ合うような距離で、シアはにっこりと微笑んだ。
「冗談です、水江さんの気持ちを試すようなことを言いました。ごめんなさい」
 そう言って身体を起こす。いつもどおりの優しい手つきで首に掛けていたタオルをそっと肩に掛け直して。
 水江は茫然と離れていく彼の姿を追って視線を上げた。
「シア」
「……やっぱり、あなたは綺麗ですね」
 ふとシアがそんな呟きを洩らした。


--To be continue--
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Comment
  ken [URL] #GCA3nAmE
こんにちは。
応援します。
では、また。。。
拍手しました。
こんにちは  2010.05.03 Mon 09:27 [Edit]
  水沢 [URL] #/02qLiNA
こんにちわ。はじめまして。
コメント、そして拍手いただきありがとうございます!

我ながら‘このへたっぴ!他人に見せられるレベルじゃねーわ!’と思いつつ…応援いただけますと本当に励みになります。

また継続して読んでいただけますと幸いです。よろしくお願いします。
  2010.05.03 Mon 21:03 [Edit]






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水沢圭子

Author:水沢圭子
目指せ小説書き。日々の生活に甘んじず頑張るために実験的にブログ小説を始めることにしたくせに、結局書けてません。とはいえ現在は投稿メインでがんばり中。

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