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 シア。
 シア。
 シア、──私のもう一人の〈半身〉、双子の姉。
 恋に落ち、地上に堕ちた〈天使〉。
 本当は分かっていた。
 彼女は孤独だった。私でもレイでも埋めることができなかった、どうすることもできないほど、壮絶な彼女の孤独。
 それを決定づけたのは私だ。
 たった二人きりの家族、二人きりの姉妹だったのに、私は私の〈悪魔〉に出会ったとき、彼女を捨てたのだ。なんのためらいもなく。
 寒く寂しく、薄汚れた路上で。
 彼女はひとりだった。私が覚醒し、アーチィにつれられたあと、彼女の悪魔が──レイが迎えに行くまでのわずかな時間とはいえ、彼女は本当にたったひとりだった。
 ……彼女は絶望しただろう。私が彼女を捨てたと気付いたとき。
 半身を裏切ったのは私だ。
 彼女を見放したのは私だ。
 私たちは二人だけでずっと生きてきたのに。どれだけ悲しくて痛くて怖くて苦しくても、二人だから生きてこられたのに。……一人にしてはいけなかったんだ。たった一秒でも一瞬でも。奪ってはいけなかった。自らを、彼女から。
 レイもそれを分かっている。彼女の絶望を、たぶん出逢った瞬間から感じとっていた。だから彼は彼女を一瞬でもたった一人にしたことを、ずっと負い目に感じている。
 ……そう、彼の優しさは負債だ。
 シアもそれに気づいていた。
 求めているのに、愛しているのに、その負担がどうしても慰め合うことを許さない。
 だから彼らには、お互いを手放す選択しか残されていなかった。
 ──愛しているから。
 ──愛しているから。
 私に〈彼ら〉の選択を、責める権利などどこにもないのだ。

 ……静かだった。
 一軒家のリビング。
 外はすでに夜で、部屋の電気はついてない。だけど薄ぼんやりと明るい光が包んでいた。それは私やアーチィやレイの力のせいだ。
 ゆらゆらと光が揺れる。
 ふとアーチィが表情のない眼差しでレイを一瞥した。
「──許すの?」
 私もまた隣に立つ彼に目をやる。
 ふんと鼻をならして、レイは暗い赤色をした髪をかき上げた。
 ──取り残された悪魔。
 だがそれは〈彼ら〉の選択なのだ。
「許せないよ。気にいらないよ。最悪の選択だって今でも思うよ。だけど仕方がない。私にはそれを阻む権利なんてないんだ」
「そう、」
 分かった、とアーチィがあっさりと頷いた。はっと顔を上げれば、視線がまっすぐにつながる。私を見つめた彼の目がやわらかく微笑んだ。
 それでもう十分だった。


To be continued
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水沢圭子

Author:水沢圭子
目指せ小説書き。日々の生活に甘んじず頑張るために実験的にブログ小説を始めることにしたくせに、結局書けてません。とはいえ現在は投稿メインでがんばり中。

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