上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
 

「美帆さん」
「……ハル。ハル!」
 すぐ傍らに膝をついて声をかければ、ばっと身体を起こして彼女は僕にだきついてきた。
「もうやだ。もうやだ。もうやだ。そばにいて。ハルだけはそばにいて。それだけでいいの。それだけでいいから」
「……美帆さん」
 縋りつく腕が痛いほどで。肩にあたる彼女の頬が熱くて。胸に当たる彼女の身体がやわらかくて。
 ──一生、そばに。
 ああそうだ、と僕は思った。閃くように。けれどそれはまるで永遠の祈りのような気持ちだった。僕は一生そばにいよう、彼女のそばに──〈彼女〉?
「────っ」
 不意に強烈な違和感が襲った。
 心臓が──いや、心臓じゃない、もっと奥の方でなにかが跳ねた。
 一生そばにいる? 本当に? でも僕の大切なものは〈彼女〉じゃないはずなのに。〈彼女〉じゃないと明らかに分かっているのに。大切なものを放って彼女のそばにいる?
 なにかがおかしかった。
 腕の中に小さなぬくもりを抱きながら、記憶と想いが混乱する。
 ──君の大切なものは見つかった。
 どこに?
 感覚を研ぎ澄ます。鋭く、繊細に、注意深く。ふと身体にふれる熱が遠ざかっていく感覚があった。肉体で感じるのではなく、〈意識〉で世界を感じるように、僕の〈心〉が僕の周りに触れていく。
 どこに? どこにあるの? 僕の大切な、大切な──〈半身〉。
「────」
 ああ、と吐息が漏れた。
 分かった瞬間、どうしようもなく心が震えた。
「……美帆さん」
 僕はそっと僕にすがりつく美帆さんの肩をつかんで、彼女の身体を起こした。泣きはらした目をして、彼女が僕を見上げる。
 感情の持っていく場所が分からなかった。泣きたいような気持ちがしていた。苦しい気もする。だけど、悲しいくらいに僕は今、心の底から嬉しいのだった。
「もしかして、お腹に、子どもがいるのではありませんか?」



To be continued
----------
にほんブログ村 小説ブログへ

ブログランキング・にほんブログ村へ


FC2 Blog Ranking
スポンサーサイト
 
プロフィール

水沢圭子

Author:水沢圭子
目指せ小説書き。日々の生活に甘んじず頑張るために実験的にブログ小説を始めることにしたくせに、結局書けてません。とはいえ現在は投稿メインでがんばり中。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
リンク
QRコード
QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。