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 本村悟は相談があると言えばあっさりと応じた。不在がちの両親への不満をぶちまければ慰めてくれた。力になると言った。優しさを示した。そして誘えば簡単にのってきた。本当にそれこそ苦労もなく簡単に手の中に落ちてきた。……そんな簡単なものは本物じゃない。──きちんと。あたしはきちんと本物が欲しいのに。
 あたしはうんざりする。どうしようもなく鈍く、愚かな男を前にして。
「終わりって言ったら終わりなの! 良かったね。女子高生と寝れて」
「原嶋!」
 ぎょっとして本村悟は遮るように名前を呼ぶと、周囲を見回した。そういう弱さもいらないのに。なんだか彼が哀れにすら思えてきて、あたしは吐息をついた。
「じゃ、あたし、もう帰るんで」
 行ってくれませんか。
 そう突き離せば、彼は口をつぐんだ。それで終りだった。

 ……気持ちがひどく苛立つ。ざわざわとして気持ち悪い。
 今すぐハルに会いたかった。あのすごく落ち着いていて優しくて穏やかな存在に会いたかった。そばにいてほしかった。
 あたしは早足で公園に入っていった。最近はいつも公園の端にあるベンチで彼はあたしを待っていてくれていたから。
 ベンチにたどりつく前の小さな植え垣を曲がって、あたしはハルを呼んだ。
「ハル! 終わったよー。帰ろ。……ハル?」
 ハルは一人じゃなかった。いつも座っているベンチのそばに、ハル以外の人影があるのが見えた。暗闇の中、外灯に浮かび上がる──スーツ姿?
 なんだか嫌な感じがして、あたしはすぐそばまで駆け寄った。
 ハルと一緒にいたのは、ふたり。仕立てのよさそうなスーツを着込んだ青年で──しかも片方は真っ黒で、片方は真っ白という奇妙ないでたちをしていた。ハルを呼べば、その声に気がついたのか、二つのスーツが同時にあたしの方を振り返る。
 ありゃ、と黒いスーツの方が声を漏らした。とほとんど同時に、
「美帆さん!」
 白と黒の間をすり抜けるようにしてハルがあたしのそばに歩み寄ってきた。まるであたしを庇うように立って、白と黒の二人と向き合う。
 なんだかさっぱり状況が分からない。さっきまでの不愉快を忘れてあたしは呆然とした。
 すぐそばのハルの袖を引く。
「ハル? なに? 誰? どうしたの?」
「……僕にも分かりません」
 分からない、と言いながら、ハルの声は戸惑っているようだった。あたしはハルの身体の影から、白と黒のスーツの二人を覗き見た。
 ──すごい、きれい。思わず息を飲む。白いスーツをきた青年は、背中までかかる長い白銀の髪がゆるやかなウェーブをうち、白皙の顔に整った鼻梁、深い蒼の瞳をして、なんていうかギリシャ彫刻のような美しい造形をしていた。まさに〈女神〉か〈天使〉かという美しさ。その隣にいる黒いスーツの青年も整った顔立ちをしていたが、どちらかといえば柔和で人のよさそうな雰囲気と、悪戯っ子のような生き生きとした眼差しが目立つ。
 とにかくどちらも日本人ではないようだった。


To be continued
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プロフィール

水沢圭子

Author:水沢圭子
目指せ小説書き。日々の生活に甘んじず頑張るために実験的にブログ小説を始めることにしたくせに、結局書けてません。とはいえ現在は投稿メインでがんばり中。

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